外伝「商人のカクゴ~砂漠の行商アシュールの場合~」 外伝「商人のカクゴ~砂漠の行商アシュールの場合~」 編集

 

こんな暑いさなかに砂漠をご旅行なさるとは、ご苦労様ですねぇ。
特別良い品物があるわけじゃありませんが、旅行に必要なものは全部そろってますよ。

 

え?あたしですか?あたしゃ見ての通りの商人ですよ。砂漠の行商アシュールって言や、ちょっとした有名人のつもりだったんですけどねぇ。
最近は砂漠に来る冒険者も少なくなったもんです。分かりますよ。あなた、冒険者なんでしょう?ただの旅人とは雰囲気が違う。

 

ま、あたしの事も知らないようじゃ、冒険者と言っても駆け出しってところかな?よーし。あなた、ちょっとそこに座りなさい。
アシュール兄さんが、この砂漠に起きた苦難の歴史を教授してあげよう。ほら、ハイネ名物バナナジュースもおごってあげるから。
これでも飲みながら、気楽に聞くといいよ。聞くよね?聞かないなんて言わないよね?言わせないけどね!?

 

アシュール兄さんの武勇伝その1「以前の砂漠はキケンがいっぱい!」

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今じゃあ転移魔法も随分と普及して、この砂漠を旅する冒険者も少なくなったもんです。
でもね、以前は犬小屋の無いシルバーナイトタウンから、犬小屋のあるウッドベックへ、

テレポート代も節約して砂漠を渡る人が結構いたんだよ。

 

そんな冒険者最大の敵が、ジャイアントアントソルジャーだ!最近は大人しくなったけど、以前はバンバン襲ってくるわ、

足は速いわ、噛まれると大ケガするわ。

 

おまけにそれが集団で襲ってくるという、悪夢のようなモンスターだったのさ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そうそう、そいつ。それがジャイアントアントソルジャーね。ってあなた何してんの!ちゃんとあたしの話を聞きなさい!

 

はーっ、はーっ。・・・ったく。商人に助けられる冒険者なんて聞いたことがない。

 

で、話の続き、いいかな?あたしは当然その頃から、この場所で変わらず商売をしていますよ。アリがちょっとやそっと

大きくなったくらいで、あたしにとっちゃあ・・・いや、ジャイアントアントソルジャーはちょっと大きすぎる気もするけどね。

 

アシュール兄さんの武勇伝その2「ラスタバドは商売の邪魔!」

アシュール兄さんの武勇伝その2「ラスタバドは商売の邪魔!」 編集

 

反王がアデンから追い出されて、しばらく経ってからだったかな?
やー、反王の税率は高いうえに取り立ても厳しくてね。こんな砂漠の真ん中にまで来てましたよ、ブラックナイトが。

反王配下でいい思いもしてたんだろうけど、さすがにあれは同情したね。
鎧兜に隠されてて表情は見えなかったけど、ありゃ絶対しんどかっただろうね。脱水症状を起こさないだけでも

大したもんだったよ。

 

ま、そんな重税から解放されたー!と思っていたら、現れたんだ、奴らが。そう、ラスタバドのダークエルフだよ!
あいつら、夜になるたびにうんざりするほどの数で湧いてきて、それに恐れをなした冒険者が砂漠に来なくなってしまってねぇ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

しかもラスタバドをアデンから追い出すための資金調達だとかで、税金の上乗せと来た!商売あがったりだったよまったく!

たまったもんじゃない。

 

風の噂じゃあ、最近、またラスタバドの襲撃が各地であったそうじゃない?それはどうなった?うん、撃退した?

そうそう!それは良かった。

 

もう、あんな事の繰り返しは勘弁してほしいねぇ・・・。

 

アシュール兄さんの武勇伝その3「アンタラスがやってきた!」

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さあ、この話はあたしのとっておきだ。最強のモンスターと聞いて、あなた何を想像する?ドレイク?ああ、強いねえ。

でもまだまだ。フェニックス?それも中々の強さだ。でも、まだまだ。

 

最強のモンスターと言えば、ドラゴンだ!あなた、ドラゴン見た事あるかい?ないだろう。
あたしかい?ふっふっふー。あたしは見た事があるんだなー。これがー。

 

信じられるかどうか分からないけれど、以前、この砂漠に"地竜アンタラス"が出現したことがあるんだよ!
いやー、すごかったね!あの牙!あの爪!あの鱗!地面を隆起させる魔法に、毒のブレス!

(シアンポーションがたくさん売れたよ)

 

並み居る歴戦の冒険者たちも、手も足も出ない強さだったよ!あたしは心底思ったね。ドラゴンは最強のモンスターだって。
そう、あたしはその中でもここで、この場所で商売を続けていたのさ。どう、ちょっとは尊敬する気になったかい?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

(まあ、こんなに近くではなかったけど・・・)

 

 

 

なら、覚えておきなさい。あたしは砂漠の行商アシュールさ!

 

そして、冒険者は立ち去って・・・

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いやー、久々に昔話を存分に語って、気持ちよかったねぇ。さ、そろそろ商品を片付けて、ちょっと休もうかな・・・。
ん?ありゃ誰だい。お客さんかな。今どき砂漠を徒歩で渡って来るとは珍しい・・・。

 

こんな暑いさなかに砂漠をご旅行なさるとは、ご苦労様ですねぇ。
特別良い品物があるわけじゃありませんが、旅行に必要なものは全部そろってますよ。

 

あれ、お客さんじゃない?では一体どういったご用件で?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然そんなことを言われてもねえ。商売の邪魔だよ!

お爺さん、あたしが怒らないうちに、とっととここを離れなさいな!

 

そして老人も立ち去って・・・

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おや!これは珍しい!デポロジュー様じゃありませんか。お久しぶりですね。その節は大変お世話に・・・。

ま、お互い様ですね。はっは!

 

ん?ずいぶん難しい顔をされていますが、どうかされましたか?

あたしが気づかないでご無礼をしていましたら、謝らせていただきますが・・・。

 

そうじゃない?はて?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あなたもですか。
・・・そうですか。つまり近いうちに、この辺りで、何か良くないことが起きるのですね?

 

ご忠告、痛み入ります。きっと、あのご老人もあなたの関係者の方なのですね。

あの方にはひどい事を言ってしまいました。あたしが詫びていた、とお伝えください。

 

商人のカクゴ

商人のカクゴ 編集

 

でも、ね。デポロジュー様。でも、です。
あたしは砂漠の行商アシュールなんです。

 

砂漠に潜むどんなモンスターも、ラスタバドのダークエルフ達も、最強のモンスター、ドラゴンでさえも、

あたしをここからどかす事はできなかった。

 

いや、あたしが、ここから動かなかったんだ!それが砂漠の行商アシュールなんですよ、デポロジュー様。

 

これから、ここで何が起きるかは一介の商人であるあたしには想像もつきません。

あなたがわざわざ来て下さったんだ。きっと相当な災厄なのでしょう。
その事には、感謝いたします。あたしなんかに気をかけてくださって、本当にありがとうございます。

 

でもあたしは、絶対にここから動きませんよ!だからあなたも、笑って見届けてください。

「あいつ、こんな時にも変わらず商売してやがる」と。


それが、あたしの"商人の覚悟"なんですよ、デポロジュー様。

 

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