誰かを支配することはなんと魅力的な行為であろう。それだけ権力と力への欲望は今も昔も歴史の流れを左右することになる。
ヘルバインは誰よりも権力を手に入れることに貪欲なものであった。自らグランカインの神託を受けて大神官に選ばれたと考えていたヘルバインは、実際に神託を受けた者がダンテスだと知ると、その自尊心は無惨にも崩れ去った。
この後、ヘルバインはグランカインを超える力を手に入れるため、魔族の力に興味を示しはじめた。これを利用した魔族はヘルバインに魔族の力を与える代わりに彼の霊魂を手に入れた。これによりヘルバインはダークエルフと魔族、この二つの自我を持つこととなった。
霊魂を売ったヘルバインは判断力を鈍らせていった。彼は異界の魔物であるギルタスを目覚めさせるためグランカインの力を要することは言い訳に過ぎず、実は多くのダークエルフたちが犠牲にならざるを得ないことを知りつつも、そのことを黙っていた。より大いなる権力を渇望したヘルバインにとって、自分が新たなダークエルフの指導者となることのみが目的であったからだ。